企業透明化法による中小企業に対する新たなコンプライス要件とは

貴方は今まで、自分自身の会社を設立したいと思ったことはありますか? もし車をガソリンで一杯にするだけのお金をお持ちなら、貴方はラッキーです。ハワイでは、わずか50ドルの申請料だけで、貴方も会社を設立することができるのです。もちろん、その株式は(今のところ)価値がないかもしれませんが、少なくとも名刺に新しい肩書を加えることは可能です。

もし貴方が会社を設立すれば、米国内の何百万もの会社経営者の仲間入りをすることになります。多くの経済学者は、会社設立を容易にすることで、経済のイノベーションが促されると考えています。しかし、連邦政府にとっては、すべての企業を追跡することが問題となってきているのです。組織犯罪、テロリスト集団や外国政府は、マネーロンダリングや制裁逃れのために、詐欺的なビジネスを隠れ蓑としています。複数の、互いに絡み合った事業体を形成することで、悪質な行為を行う者は、秘密のダミー会社の中に身を隠すことができると言うわけです。

このような行為に対抗するため、議会は2020年に企業透明化法(CTA)を可決し、国内の企業とその所有者に関する中央データベースを構築しました。財務省によると、2025年までに何千万もの企業が金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)に所有者による報告書を提出する必要があると言うことです。貴方は企業の所有者ですか? あるいは企業の事務処理担当者ですか? もしそうなら、この先をお読みになり、CTA遵守の方法についてご確認ください。

FinCENに報告書を提出する必要がありますか?

CTAは、米国内で活動する外国人登録事業体を含む、LLCや企業などの政府登録が必要な法人に適用さ れます。しかし、CTAには多くの適用除外があるため、すべての登録事業体がCTAの「報告対象企業」となるわけではありません。

CTAの下で報告が免除される事業体は、その規模や業種により、すでに高いレベルの監督下にある事業体がほとんどで す。銀行、信用組合、証券ブローカー、会計事務所などの登録金融機関や非営利の501(c)団体は、独自の報告要件を持っており、一般的にFinCENに所有権報告書を提出する必要はありません。また、CTAは「大規模事業会社」を免除しており、これは米国内に20人以上のフルタイム従業員を有し、総収入または売上が500万ドルを超える事業体のことを指します。

自宅を保有するために会社を所有しておられる場合や、ごく小規模なビジネスを営んでおられる場合は、免除の対象にならない可能性が高く、FinCENに報告書を提出する必要があります。米国市民のみが所有する 「非活動 」 事業体も免除の対象となりますが、その事業体が何らかの財産(他の企業の持ち分を含む)を所有していたり、過去1年以内に1,000ドル以上の資金を受け取っている場合は、非活動事業体とはみなされません。

報告書には何を書く必要がありますか?

登録企業が報告対象企業である場合、その企業の 「実質的所有者」全員をFinCENに通知する必要があります。「実質的所有者」とは、会社の25%以上を所有または支配している人、または会社の運営を実質的に統括している人を指します。「実質的な支配力」を持つ人とは、その人が上級役員(社長、顧問弁護士、COO、その他の高位の役職など)であるか、会社の重要な意思決定を行う権限を持つ人を指します。何をもって「重要な決定」とするかは会社によって異なりますが、上級役員の任命や解任、主要な契約の締結、統治文書の改正などは常に重要な決定となります。

2024年1月1日以前に設立された報告対象企業は、実質的所有者に関する情報のみを提供するだけで良いのですが、2024年1月1日以降に設立された報告対象企業は、実質的所有者とは別の、または重複する可能性があるすべての「会社申請者」についてもFinCENに通知する必要があります。会社申請者とは、会社の設立や登記に使用する書類を直接提出する人、またはその書類の作成に主に責任を持つ人を指します。会社を代表して書類を提出する弁護士は、会社申請者になる可能性がありますが、弁護士(会計士やその他の第三者アドバイザーと共に)は、一般的に受益者ではないことに注意してください。実質的所有者または会社申請者に関する情報を提供する場合、報告対象企業は、個人の氏名、生年月日、居住地の住所、および個人のパスポート、運転免許証、またはその他の州発行の身分証明書のスキャンしたコピーを提供する必要があります。

上記の情報に加え、報告対象企業はFinCENに対し、会社の法的名称、会社の商号、米国内の主たる事業所、会社の設立または登録の管轄区域、会社の納税者番号(または外国の同様の番号)を提供する必要があります。

報告書はいつまでに提出する必要がありますか?

会社が2024年1月1日以前に設立された場合は、2025年1月1日までにFinCENに初回報告書を提出する必要があります。会社が2024年1月1日以降に設立された場合は、会社の登録が成功したという通知を受けてから90日以内に報告書を提出しなければなりません。ただし、2025年1月1日以降に設立された会社の場合、30日以内に報告書を提出する必要があります。

会社またはその実質的所有者に変更があった場合は、変更後30日以内にFinCENに追加報告書を提出する必要があります。事務所の移転、DBAの登録、実質的所有者の死亡はすべて、FinCENに報告しなければならない変更です。ただし、会社の終了や解散を報告する必要はありません。

FinCENに報告書を提出するには?

CTAに基づき提出が義務付けられている報告書は、FinCENのウェブサイトからアクセスできる安全なシステムを使用してオンラインで提出することができます。

報告書を提出しなかった場合はどうなりますか?

報告対象企業が故意に最新の正確な情報をFinCENに提供しなかった場合、その企業と上級役員は、違反が継続するごとに最高500ドルの民事罰、または最高2年の懲役および/もしくは最高10,000ドルの罰金を含む刑事罰を受ける可能性があります。

このような罰則を受ける可能性を鑑みて、すべての経営者、役員、管理職の方々は、今一度、会社の書類を確認していただくことをお勧めいたします。